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「鎌倉みんなのけんちく学校」がめざすもの

本物の「木」に触れる。本物の「手」に触れる。
をテーマに3年前から開催している鎌倉みんなのけんちく学校。

建築家さんや職人さんと一つ一つ、お話ししながらプログラムを作り上げてきました。私たちが考える『鎌倉みんなのけんちく学校』の魅力をご紹介します。

1. 五感とからだをフルに使って感じる

『鎌倉みんなのけんちく学校』では、人が植え、長い年月をかけて丹念に育ててきた森に入り、林業の現場を体験・見学します。森で働く人の話を聞きながら、森の空気感やスギ・ヒノキの匂い、倒されたばかりの切株の湿り気など、自分の五感とからだで森を感じてほしいと思っています。

また、倒された木が乾燥、製材、加工されていく中で、どのように木の硬さや手触りが変わっていくのか、木片からどんな香りがするのか。木造の空間はどのような居心地がするのか。

全回を通して、子どもたちはさまざまな形で木に触れていきます。
それら全ての体験が子どもたちの記憶に刻まれていくのです。

2. 歴史と文化を支え続けてきた職人の仕事を間近に

法隆寺からつながる日本の木造建築文化。
『鎌倉みんなのけんちく学校』の講師の皆さんは、木造建築の第一線で活躍されている方ばかりです。自ら仕事を選び、研さんを積まれ、さらに素晴らしい技を目指して、未来を見据えながら日々お仕事をされています。

言葉は少なくとも、自らの仕事に対する厳しい姿勢、道具への愛着、職人としての矜持と向上心を持った背中は、職種を超えて、子どもたちに働くことの本質を伝えてくれます。

3. 自らの手と道具を使った本物のものづくりを体験

『鎌倉みんなのけんちく学校』では、自らの「手」を使うことを大切にしています。パソコンソフトや3Dプリンターなどが発達し、どんなに便利になっても、自分の感覚がものづくりの原点だからです。

そして、自らの手を使うものづくりに欠かせないのが道具です。限られた資源を無駄なく使いながら、美しく、理想とするものを作るために、脈々と受け継がれた知恵の結集が、今の道具なのです。

けんちく学校には子ども用のものはなにもありません。道具も素材も、プログラムの中で子どもたちが講師と一緒に作り上げるものも、すべて職人さんが扱う本物です。

「簡単ではないからこそやりがいがある」これは講師の大工さんの言葉です。

4.日本の自然を活かす技と工夫への気づき

日本には北の亜寒帯から南の亜熱帯まで、そして海抜ゼロメートルから3千メートル級の山岳地まで、世界でもまれにみる多彩で豊かな自然があります。このような風土の中で培われてきたのが、日本の木造建築の技でした。

雨風を防ぎ、地震に耐え、湿度を逃がすために、素材の特徴を知り抜き、適材適所で活かし、組み立て方に工夫が凝らされています。それはいわば、自然を相手にしたチャレンジの連続でもありました。

今ある資源を最大限に生かし、目の前の課題に対してできることは何か。
『鎌倉みんなのけんちく学校』で学ぶ職人さんの技と知恵は、これからの社会を生きる子どもたちに、自ら解決策を考えていくことの大切さも示してくれます。

5. 連続講座を通してもたらされる自分自身の発見

『鎌倉みんなのけんちく学校』は連続講座となっており、1回ごとの参加はできません。森で木を育てるところから、家を建てるまでにはさまざまな職人さんが関わっています。誰一人、抜けても成立しません。それぞれが役割を担うことで素晴らしい建築が出来上がるのです。
そして、職人さんは自分の得意なこと、好きなことを生かして仕事をしています。

家を建てるまでのさまざまなプロセスを経験することは、子どもたち自身が、自分は何が好きなのか、何に興味があるのかに気づくきっかけにもなるのです。だからこそ連続講座なのです。

そうして、一人一人の多様な“好き”があるからこそ、
協力して豊かな社会が成り立っていることに気づいてほしい。
それも私たち、『鎌倉みんなのけんちく学校』の願いです。

(文:檜山綾香)

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